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せっかくだから行こう。

jyanshi: 
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[撫子]PLAYER、雨が早く止んだらそこに行くか? それを撫子さんに言おうと思った時、彼女に同じことを言われた。 [player]撫子さんおすすめの景色だし、私としては見ないと気が済まないな。 [撫子]そうだな。ここで雨の音を楽しむのもいいけど、雨上がりの夕焼けはもっとすごそうだしな。 [player]うん。 雨が止み、瑞々しく新鮮な空気でリフレッシュしながら、私達はちょうど夕暮れ時に目的地の観光スポットに到着した。 [ガイド]本日は「最高の夕日」のためにお越しくださり誠にありがとうございまーす!こちらで展望台の入場券をご購入くださーい! ついさっきまで走っていたオフロードと違って、ここはちゃんと整備されていて、ルート案内がはっきり見えるし道路も走りやすい。今もこうして、スタッフが案内をしているし。バイクを駐輪場に停めて、撫子さんと一緒に展望台に登った。 目の前に広がったのは、赤く染まった広い草原と輝く湾曲した川たち。夕日が水面を照らし、九つあるようにも見える。撫子さんはこの景色を見て、懐かしそうにしていた。 [撫子]どうだ、PLAYER。あたしが何年も忘れなかったこの景色は? [player]本当に、綺麗だね……スマホの波が手前に無ければ、もっと。 と言い終わるが早いか、他の観光客がすぐ側を通り過ぎ、肩にぶつかった。高く持ち上げられたスマホが余計な反射を生み、画面に映った壮麗な夕日にも観光客たちの頭が映り込んだ。 ここは九つの夕日だけでなく、九百を超える観光客も見ることが出来る……と言うよりむしろ、観光客以外何も見えない。 この小高い丘の上に建てられた展望台は、カメラを持った観光客と三脚に満ちていて、中には自撮り棒で夕日と記念写真を撮る人やライブ配信をしている人もいる。 観光客たちの喧騒は、夕日の景色にふさわしいとは言い難い。展望台から溢れ出しそうなほどの人混みから逃げ出して、撫子さんと二人、後ろ側にある近くの階段に座って休む。 [撫子]これだから観光スポットは好きになれないんだ。 [player]それ、わかる気がする。 [観光客]あの……すみません…… 若い男性が話しかけてきた。 [player]ん? [観光客]申し訳ないのですが、写真を撮ってもらえませんか……? 一枚だけでいいので! 彼の後ろで、いかにもなペアルックの若い女子がこちらを心配そうに見ている。 なるほどそういうことか。 [player]じゃあ、ちょっと行ってくるね。 [撫子]ああ。 撫子さんは短く同意した。 [player]すぐ戻るから。……さっきに言っときますど、私そんなに撮影上手くないですよ。 [観光客]記念ですから、撮っていただるだけでありがたいです。 彼のカメラを受け取り、レンズを二人に向ける。画面の中には二人と景色の他に、あちこち行き交う観光客の群れも入っている。しかし二人はお互いのことしか見ていない。その美しく甘い瞬間を、シャッターに納められるよう頑張ってみた。 [観光客]綺麗に撮ってくださりありがとうございました。そうだ、お二人も一枚撮りませんか?僕、こう見えて写真は結構得意なんです。 撫子さんの方に振り向くと、彼女は機嫌良さそうに微笑んでこっちを見ている。 撫子さんを呼んでこようか?