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ついて行く

jyanshi: 
categoryStory: 

[player]……どこに行くんだろう。 ミーちゃんはしょっちゅうどこかに出かけるけど必ず戻ってくる、とサラさんは言ってたけど、こんな郊外で迷子にならないか心配だ。 スマホのライトを頼りに、ミーちゃんの後ろに付いて近くの丘を登った。 ミーちゃんは丘の頂上で座り、まっすぐ前を見つめながら、時々尻尾を振っている。 [player]景色を眺めにここまで来てたんだ。ご機嫌みたいだね。 [ミーちゃん]……。 そう言えば何も言わずに抜け出してきちゃったから、サラさんに連絡しておかなきゃ。ミーちゃんと一緒に丘の景色を楽しんでます、とCatChatの個人宛メッセージを送った。 ここからだと家馬車とテントで構成された集落全体が一目で見渡せる。宴の真っ最中の、人々の笑い声がこんな距離まで聞こえてくる。 [player]……これはもしかして? 炎のような花が山間で咲き乱れる、って言ってたよな? [player]ミーちゃん、ここで大人しく待ってて。 [ミーちゃん]みゃう? [player]君のご主人を連れてくるから、一緒に景色を楽しもう。 かがり火の前に戻り、サラさんと一緒に飲み物を持って、丘の頂上に戻った。 [ミーちゃん]にゃ~。 [サラ]ミーちゃん、待っててくれたのね~。眺めがいい場所って、ここかしら~? [player]そうです。ここから集落の方を見下ろしてみてください。 集落の方を指さして、サラさんの反応を緊張しながら待っていると。 [サラ]……。 [player]……。 [サラ]これは……。本当に、綺麗に咲いてるわね。 [player]サラさんにも、そう見えますか? [サラ]ええ。お母さんが言ってた通り、本当に燃えるような花だわ。 サラさんが私の言わんとするところを理解してくれたので、「よし!」と心の中でガッツポーズをした。 [サラ]あなた、私のためにわざわざこの場所を探してくれたの? [player]いえ、ミーちゃんが連れてきてくれたんです。たまたまですけど、ここからの景色がサラさんの話と重なって思えて。故郷を見つけるのは難しいって言ってましたけど、案外近くにあったんですね。 一生を旅して過ごす「異郷の民」にとって、私達が言うような「故郷」は確かにどこにも無いんだろうけど。 [player]花が咲いている美しい山々は、世界中の色んな所で見られると思います。でも、今みんなで楽しく歌い踊るこの光景は、多分ここでしか見られないんじゃないかな。 覚えている故郷の景色はそれぞれ違っても、みんなが集まってお互いに支え合いながら生きている。「異郷の民」の共通点は、こういうところなんだと思う。 [サラ]……あなたの言う通り、ね。 サラさんは微笑みながらジュースをグラスに注ぎ、私に差し出した。澄んだ液体の中でかがり火の光が舞い踊っている。 [サラ]綺麗ね、砂漠のバラは。 [player]そうですね。 [サラ]乾杯。 [player]乾杯。 涼しい夜風のもと、サラさんと二人で「故郷」の景色を静かに楽しんだ。 二人とも一言も言葉を交わさなかった。ミーちゃんもいつの間にか、サラさんの足元で眠りについた……。